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The Gymnopédie Will Not End

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The Suicide Circus
Cirque;
Lent et Douloureux
Lent et Triste
Lent et Grave

ゆっくりと悩めるが如く、若しくは犬の為のぶよぶよとした前奏曲

#01 ゆっくりと悩めるが如く、若しくは犬の為のぶよぶよとした前奏曲 Being able to worry relaxedly is nearly - or is, a flabby prelude for dogs

幼い頃より、どうにも遊園地で遊んだ記憶と云うのが余りない。
目の前で回り続ける観覧車を前にして、宇佐見蓮子は不意に思った。手にした革の鞄が酷く重い。興行の中心とは何だったのか。其れを計るには些かな生きている時間が少な過ぎる。夏の死んだ後に残った風は、薄手のコートの襟を僅かには生き温かくて、けれど裸の侭にしておくには冷たかった。シャツ一枚で十分だったのかもしれないと着込んだ布地の合間から行き過ぎる汗の一滴を噛み締めながら、喉の奥で呟いた。

新都から電車を乗り継ぐ事、一時間と僅か。転寝をするには短いが、陽の翳りを眺めてから出かけるには少し遠い。そんな場所に、其の遊園地は在った。周りは今では珍しく木々が申し訳程度に植えられた其の檻の中で、取り残された様に。蓮子が、此処を訪れるのは生まれて初めてで、冷静に考えてみれば、そう、遊園地其の物へ訪れた事自体が初めてなのかもしれないと。今迄通り過ぎて来た人々の口の端から、名前が出た覚えも無い。昔の、本当に大昔の物語の中には確かにあった様な気もするが、若しくは、朽ち果てた姿の画像ばかり。まるで、図鑑でしか知らない、世界の何処かに居ると言われている不可思議な生き物を眺めているのに近い、そんな認識しか持ち合わせてなどいなかった。

遊園地と云う、此の空虚な機械達は、いつから子供の手から離れていったのだろう。