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Infinite Blade Pavilion/Story/Prologue

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魔法の森を白く染めていた雪も解け、

緩やかな春の訪れも、桜の散花とともに移り変わり、 青々とした若葉が日差しとともに輝く季節も終わりを告げようとしていた。

年年歳歳花相似たり・・・・とはいうものの、

幻想郷の季節の巡りは毎年同じわけではない。 花の表情が毎年違って咲くように、秋の訪れも今年は少し違っていた。

いや、正確にはまだ秋は訪れていない。
1 1
暢気な巫女さん・博麗霊夢と、普通の魔法使い・霧雨魔理沙は神社の境内で

落ち葉を集めていた。 さつま芋を焼くためである。珍しく今日は地底の客人もいた。

霊夢 「おかしいわ、全然集まらない。例年通りなら境内は落ち葉でいっぱい

    なんだけど。落ち葉の神様がサボってるのかしら。     ま、でもこれだけ見事に落ち葉がきれいさっぱり無くなると境内の     掃除が楽でいいんだけどねぇ」

魔理沙「掃除が楽ならいいんじゃないか?

    でもこれだと焼き芋焼いたりできないな」     だったら手間はかかるが芋焼酎に・・・・

さとり「早くしてくださいよ霊夢さん、せっかくわざわざ地霊殿から来たん

    ですから」

こいし「はやく!はやく!焼き芋楽しみ!!」
魔理沙「地底でも焼き芋くらいできるだろ」
さとり「芋は地上の地面に生えてるじゃないですか」
霊夢 「まぁ、地面で焼こうが家の中で焼こうがたぶん味そんなに変わらな」
   「「さとりさまーーーーっ!!」」
死に物狂いの形相でやってきたのは地獄烏・お空と、双尾の黒猫・火車のお燐。

地霊殿の姉妹のペットである。

霊夢 「騒々しいわね」
魔理沙「何かあったのか?」
おくう・お燐「「地霊殿が・・・・乗っ取られましたーーーーーー!!

        わーーん!!」」

2 2
冥府、死者の住まう場所。

彼岸の住人、亡霊たちが生き生きと暮らしている場所である。

「お嬢様は気が付いているのかしら?今年の季節の巡り・・・・

 以前、私たちが起こした異変に似ている・・・?」

あの世のなかでも華やかで風雅なところ、白玉楼。

白玉楼の庭師、魂魄妖夢はお嬢様に異変を伝えようか迷っていた。 そのとき、ちょうどお嬢様がこちらに向かってきた。

妖夢 「あ、幽々子様・・・」
幽々子「妖夢。アレは最近どうかしら?」
妖夢 「え・・・?アレとは一体何でしょう?」
幽々子「あら、気が付いてないの?そんなだから庭師は愚鈍だって、

    ぼろくそに言われるのよ」

前にもぼろくそに言われたのはこのお嬢様にだったが、

どうやらお嬢様も異変には気が付いていたらしい。

妖夢 「もしかして『秋』が・・・・」
幽々子「違うわ。あなたの刀よ。そろそろ、ちゃんとした手入れをした方が

    いいかもしれない。」

妖夢の刀、楼観剣は妖怪の鍛えた刀である。大概のものはなんでも切れる

刀であったが、妖夢は手入れを怠ったことなどはなかった。

妖夢 「手入れはちゃんとしておりますが・・・・研磨とか、研ぎなおし

    ですか?」

幽々子「武器を鍛え直すといえば地下・ドワーフ・そして炉とハンマーよ。」
妖夢 「え~?どういう発想ですか!?」
毎回のことだが、いつもお嬢様は要点をはぐらかせるのだ。

何か意図があるのだろうが、今の妖夢には理解できなかった。

幽々子「これも修行の一環よ。地底にはきっと刀鍛冶の得意な妖怪がいるかも。

    ついでに腕試しに100人斬りくらいしてきなさい」

妖夢 「別に私は辻斬りでもはないんですが・・・・」
幽々子「ちゃんちゃん、バラ、チャンバラよ~」
相変わらず支離滅裂なことを言っているお嬢様だったが、

しぶしぶ妖夢は地下世界に行ってみることにした。

3 3
暦の上では秋深し、といえども現在、幻想郷の山々には秋らしさはなかった。

紅葉を奪われた景色。それは季節の巡り、命の循環の停止を意味する。 博霊霊夢と霧雨魔理沙、魂魄妖夢はただならぬ危機感を感じ取ったのであった。

かつて地霊とともに湧き出た間欠泉と大地の穴。

確かに、紅葉を乗せた風は、地の底に向けて吹き続けていた。

霊夢 「地底に吹き込んでいる紅葉の風。突然乗っ取られた地霊殿。これは

    何かあるわね」

魔理沙「しかし秋を奪った上に地霊殿まで乗っ取るとはな。空き巣にしちゃ

    被害がひどいぜ」

妖夢 「幽々子様はああ言ったけど、おそらくは地底にこの異変の原因が

    あるはず!」

3つの影は地の底を目指す―――
4 4
地の底へと風が吹く。外界から、空から、幻想郷の山々から、人里から

紅葉を奪い、その風は茜色をまとい、地の底を目指した。 かつて白玉楼の亡霊が幻想郷中の春を集めたかのように。

――乗っ取られた地霊殿。さらに奥の、地の奥底の闇の中に、赤、朱、紅

・・・極彩色の風が躍る。 地の底に集められた「それ」を満足げに見つめ――

「彼女」の持つ刃が暗闇に煌めいた。
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