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Strange Creators of Outer World/Wily Beast and Weakest Creature Interview with ZUN

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STRANGE CREATORS
INTERVIEW 01

ZUNインタビュー

シューティングゲームとして爽快な仕上がりながらストーリーはなかなか難解な内容の「鬼形獣」。
その狙いは、いかなるものだったのだろうか。

畜生界とは、畜生とは何か

――

「鬼形獣」開発おつかれさまでした。今回はずいぶんと「撃つ」ことを進化させたシステムだったような印象です。

ZUN

システムは大して変わってないですよ。弾に当たって死ぬんだもの。そういう部分を覆しちゃうゲームはいっぱいあるけど、東方に関してはそこは変わらないと思います。まあ自分で作っていても不思議なゲームだなとは思いますけれど。

――

いや本当に。こういう結末にしようというのは、最初から決まっていたんでしょうか。

ZUN

開発を始めるまではいろいろな可能性を考えていたけれど、作り始めてからは変わっていないです。最後まで決めてから作りますから。

――

いくつか新しい設定や世界が出てきました。地獄に行くかと思ったら地獄じゃないところに行ったし。

ZUN

大きく見たら地獄の一つですよ、畜生界も。

――

そうなんですね。

ZUN

とにかく地獄はめちゃくちゃ広いんです。霊をたくさん受け入れられる。それこそ無限に広いんです。畜生界はお隣って言っているけど、まあちょっとだけ分かれてる、程度の感覚です。

――

分かれているっていうのは、どういう? 明確な境があるんですか。

ZUN

うーん、地獄がとにかく広いから、境目があったとして、それがちょっと混ざっててもわからないよね。

――

背景は圧倒的に違いましたけれど。

ZUN

そこはゲームだから(笑)。地獄はわりと地獄らしい地獄のイメージです。

――

めちゃくちゃ骸骨がそこら中に埋まってますけど。

ZUN

それに加えてものすごい風が吹いてる。まあ、どっちもプレイヤーから見たら地獄ですよ。地獄のどこかはあまり問題じゃない。キャラたちもそういう風な認識で見ています。

――

なるほど。

ZUN

地獄こそが一番懐が広くて、誰でも受け入れる場所ですよ(笑)。広すぎるからめちゃくちゃで、いろいろな奴がいろいろな場所で幅を利かせてるんです。

――

その中で割と革命的なことが起こっていた、というのが今回の顛末と。

ZUN

あれはなんだろう、ちょっと難しいですよね。プレイしただけでは分かりにくいかもしれない。

――

どうしたら分かるんでしょうね。

ZUN

うーん、そこに住んでる人の感情が無いからね。みんな基本が畜生だから、ちょっと理解しづらいんです。それに、あの世界にいるであろうたくさんの動物霊たちの感情も、全然伝わってこないですし。

――

唯一、オプションになった子たちはそういう情報が読み取れた気がします。「名前を付ければよかったかも」という話も頷けるというか。

ZUN

でも名前を付けると、ゲームを始めるときの動物霊を選ぶ時にキャラ名が出ることになっちゃって、それはそれでどういう設定なんだってなっちゃうんですよ。かといって霊夢たちと話しはじめるときに自己紹介を始めちゃうのもなんだかなあって。付けてあげても良かったけど、出すタイミングが無かったんですよねえ。

――

たしかに。

ZUN

しかも最終的にはその動物霊に乗っ取られてボスとそいつが戦い始めて、プレイヤーも主人公も置いてけぼり状態ですからね。

――

自機もプレイヤーも道具にされてる感じはあります。

ZUN

でも憑依で性格まで変わっちゃうから、それでいいと思いこんじゃうんですよ、主人公たちも。乗っ取られながら「そうだなあ」って思っちゃう。そうするとやっぱり、遊んだ人は複雑な気持ちになりますよね。これはなんだったんだろう、って。ちょっと凝った感じのことをしてみようと思ってはいるけど、スッキリしないんです。

――

特に何かが解決しているわけではないというか。

ZUN

ストーリー的にも始まったのか終わったのかもよく分からないですし。なんていうんだろう、ゲームの味である「雑味」の部分だけが、たくさんある感じ(笑)。

――

そうは言いながらも、わざわざ地獄の中で畜生界という場所を設けた意図はあると思うんですよ。

ZUN

畜生とはなんぞやから始まりますよね。動物的なものっていうのはどういうことなんだろうって考えた結果、素直に出した部分とひねくれて出した部分が現れているんだと思います。まず自分の欲求には素直である。傍若無人。でも畜生界にやってくる動物霊は元家畜とかもいるわけですよ。だから奴隷でもある。そういう二つの反発する要素は両立できるんですよ。それが「ヤクザ」なんです。

――

なるほど!

ZUN

やりたいことをやっているように見えて、戒律が厳しくて本当にやりたいことはおいそれとできない。たとえば今現実にあるヤクザは、どちらかというと反社会的な存在ということになっているけど、それが社会そのものだったらどうなるんだろうっていうことだよね。政府とかなんてない。何処が誰のシマになっているのかを争っている。上の言うことは絶対でね。そんな感じで、ヤクザ社会が無いと成り立たない状態になっているのが畜生界。そして、そういう社会を破壊しようとしてくるラスボス。

――

あっちはあっちでヤクザじゃないですかね?

ZUN

ヤクザ以下だよね。だから戦うことになる。別世界からやってきた謎の勢力ですから。全ての霊は要らなくなってくる。

偶像崇拝=アイドルネタ

――

今回の作品ではアイドルネタがちょいちょい出てきたんですが、あれは結局ブラフというか見せ球みたいなものだったのでしょうか?

ZUN

あれはあれで狙いではあります。テーマの一つなので。ずっと偶像崇拝の話をしたかったんですよね。ラスボスの二つ名だって、最初は「アイドルマスター」にしようかって思ってましたから(笑)。

――

あっはっは(笑)。

ZUN

どうにかしてその単語を入れようかと考えてたんだけど、さすがに避けました。あ、「マスター」というよりは「P」、プロデューサーのほうだったんですよね。アイドルを作る側ですから。ただのこのネタは単に露骨なうえにストーリーともあまり関係も無いのでボツになってね。まあそんなわけで、アイドルネタ自体はブラフという訳ではないんです。だからあえて1面から「アイドル」が登場していて、ラスボスにちゃんと絡めてるんです。

――

なるほど。

ZUN

今回のお話としては分かりやすいテーマがあるとかではなくて、とにかくああいった世界がある、というお披露目なんです。その世界には風刺をはじめいろいろなものが入ってますけど、作品自体で何を見せたいかと言ったら特に無くて、「畜生界という世界があって、いろいろと要素が拡がってるよ」というのを見せる。

――

5、6面のような状態の世界かなという気もしたんですが。

ZUN

そこはもちろんゲームとしての演出的な見せ場ではあるけれど、作品そのものの見せ場ではないね。

――

少なくともヤクザ組織の抗争ではないのではと。

ZUN

後半のステージはまあ、たまたま世界遺産になったしタイミングはベストだなってくらい(笑)。いままでの僕に限らず、5面と6面の音楽は逆なんです。地獄がしっとりとした曲調で、畜生界は激しいイメージなの。前だったらそうしてたんだけど、今回は反対にしているところが面白いところかなって。動物霊たちがもはや動物じゃあなくなってるあれはもう人間と一緒ですよね。「畜生界」の畜は「社畜」の畜だから。そこから解放してくれる偶像たち……AIが畜生労働から解放してくれる、そのAIを作るのはラスボス、というね。

――

でもそのラスボスを呼び寄せたのは人間(の霊)ですよね。

ZUN

動物霊的には人間は神に支配されているように見えるし、実際そうかもしれないし、どっちが正しいかはわからないんです。今でしか理解しづらい設定というかニュアンスが多いんですよね、今回。このゲームではそこには結論は出していないんです。

各ステージについて

――

各ステージについて軽く聞いていきますが、まずSTAGE1はなんというか……いろいろ酷くないです?

ZUN

水子霊ですね。亡くなった後に楽しそうにしているほうが救われるかなって。主人公側は完全に悪役ですけど、動物霊に乗っ取られてるっていうことを表現するためにね。みんな動物だから攻撃的な内容なんです。登場人物たちが、個人に対する感情がほぼ無いというか、あまり感情で動いてないんでしょうね。セリフは一見するとそう見えますけど。怒りも悲しみも無い。でも、そうじゃないと弾幕は無理ですよね。真剣に戦ってるのにあんなスペルカードなんて使ってられない。あくまでごっこ遊びなんです。戦いに勝った負けたが命に関わらないというか、そんなに大切じゃない。必死さはないんです。

――

2面はボスが牙をむいてくる感じあります。

ZUN

そこは分かりやすく三途の河の恐怖を出したいところですよね。

――

そういえば三途の河には古代魚がいっぱいっていうのは、どういうことなんでしょう。

ZUN

死んだ、絶滅して居なくなった魚たちがいっぱいで。魚たちは死んだ後も地獄にも冥界に行けないで……。僕の考え的には、魚や虫はちょっと別枠なんです。三途の河は海水も淡水も汽水もなんでもありですが、まあ世界的な量を考えたら海水のほうが多いんでしょうね。あまり河っぽくもないですし。まあ、ここでも動物を出したかったっていうだけなんですよね。1面だって、クラゲをね? まあどちらかというとヒルコなんですけど、動物というか生き物モチーフを出したかった。2面の牛が一番動物っぽいね。

――

3面も鶏で、分かりやすいというか。頭にも別の鶏が乗ってますし。

ZUN

基本的に鶏ってあまり良いイメージが無いですよね。「チキン」って言ったら強くはなさそうじゃないですか。あとはもう食べるイメージくらいしかないから、偉い感じにしてみました。

――

なるほど。

ZUN

まあ、鶏としてキャラに選ばれてますけど、ほとんど鶏は関係なくて、どちらかというと境界を見張る人、分ける人、見渡す人。いろいろ語源に説はあるらしいですけど、あいまいな感じもまたぴったりかなって。水を分けるから「みわたす」とかね。語感も似てるし。ノドの病気を治す感じ。そういうことを考えるのは面白くてね。なんにしても良い神様です、悪意が無い。

――

4面から曲もゴリゴリになっていろいろと地獄感出てきます。

ZUN

むしろ地獄を味わえるのはここだけっていう。長いよね。しんどさを味わってもらって。でもボスは簡単になるようにしています。逆に5面は道中は簡単でボスが難しい。

――

吉弔のスペルカードのほうがキツくないですか? 最初のと最後のが。

ZUN

どっちも確かに難しいかもしれない(笑)。でも吉弔の「龍紋弾」は会心の出来で、ギリギリの範囲で抜け道があるのがすごく綺麗なんです。でも、その分難しい。ストーリー上のラスボスの一人みたいなものなので、そういう難しめの弾も用意してます。東方の世界では龍は強いので仕方ないですね。まあボム使えばいいんです(笑)。食えない、慇懃無礼な奴です。

――

5面はいきなり大都会なんですが。

ZUN

いいでしょう? ああいう感じ。文明が行き過ぎるとこうなるという、わかりやすいディストピア化が進んでいるわけです。その先に待ち受けるアイドル(偶像)。しかもあれはバーチャルアイドルですから。

――

え? 実体はあるんですよね。

ZUN

偶像に実体があるかどうかは微妙ですが、言ってしまえばフィギュアですよね。埴輪って不思議ですよね、なぜみんな作ったんだろうかって。考古学では困ったらすぐ信仰のせいにしちゃいますけど、今の人間の道徳観とかで考えると違うんじゃないか、なんてことをずっと考えてね。僕としては、単純に作りたかったんじゃないかと思うんです。最初は違ったかもですが、だんだん作ること自体が楽しくなってきて、バリエーションも増えちゃった。作る欲求を満たすためだったんじゃないかな。土偶とかもね。そういうすごいクリエイターがいたんじゃないかなあ。

――

6面は古墳の中に突入するわけですが。

ZUN

世界遺産になった古墳も誰の古墳かわからないですけどね。謎めいてるのはいいです。鍵穴っぽいデザインもいいし、世界遺産になったのに調査できないのもいい。古墳の中のイメージはいろいろあったんだけど、最終的には作りやすい方向で落ち着きました。単純に、ちゃんと作ろうとするとコスト高になりすぎて。もうちょっと普通に洞窟っぽいのを再現しようとするとコスト高になるし、「自然豊か」っていう設定を引き継いでジャングルっぽい中身にするのもコストがかかっちゃう。自然物は作るのに苦労するんです。それに比べて機械類はすぐに出来ちゃいますから。

――

そういえば逃げるのも新しいですね。

ZUN

あれは今みたいな背景になったので、入れてみた演出です。演出面での驚かせ方で言うと、地獄らしい地獄から物悲しい都会に行って、自然豊かな場所に行きたかったんです。そうすると「極楽に居るラスボス」という絵的にとても面白いものが出来上がったはずだったんですが、さっき言ったようにコストがかかり過ぎちゃうし、ストーリーもちょっと変わってきちゃう。今回は狭くてSFっぽい感じの中身になったから、逃げた。逃げたというか、外に誘い出したというのが正しいんだけどね。

――

「土と水で作り変えてやろうか」はなかなかコワいセリフです。

ZUN

そのほうが死ななくていいっていう意味ですからね。不老不死にしてあげるよ、と同じです。でも今の世界で言うと病気になるような身体を捨ててサイボーグ化していこうというのがトレンドになっていきますから、ラスボスもそういう発想なんです。

――

袿姫を喚んだ人間霊的にはどう思ってるんでしょう。

ZUN

そこは一切出てこないからね。あの世界で人間霊は、ただの「素材」でしかない。みんなはその素材を奪い合ってる。袿姫も素材としか思ってない。そうしている理由は、あの世界では人間がそうなりたんです。よりよい社会の歯車になりたかっただけ、というか。

――

信仰して喚んだ時はそこまでではなかったのでは?

ZUN

そうかもしれないし、僕の中ではAIとかと同じように「この世界を支配するために作ったモノに、結果的に自分も支配されてしまう」というやつなんです。たとえば、今だと自分が体調が悪いときにすぐネット検索で調べて対応を取るじゃないですか。でもそれがエスカレートすると、体調の良しあしを判断するのは自分じゃなくなってくるんです。「あなたの今の体調はこうだから、こうしなさい」ってAIが言ってきたら、自分の感覚じゃなくてAIの指示を信じるようになる。それがこのゲームで出てくるような、人間霊が支配されている世界。それをおかしいって言ってくる動物霊たちが周りにいる。

――

どっちを選んでもダメじゃないですか。

ZUN

ほとんどの人は、ますます自分の感覚よりもビッグデータを取るようになりますよ。このゲームを遊んで面白いかどうかすら、コンピューターにゆだねるようになります。そっちのほうが信じるようになりますよね。今は周囲の人の反応を先に見るっていう人たちも多いかもしれないけれど、それすら変わっていく。もしくはもっとパーソナライズ化された提案をされるようになってくる。ゲームの世界では、そういう部分が極端に進んだディストピアです。ディストピアもいろいろな終わった世界観がありますが、こういうのもあるよと。社畜化された畜生たちもひとつのディストピアだし、AIに支配されているのもディストピアで、そのディストピア同士が戦っている世界(笑)。

――

終わりに終わってる(笑)。

ZUN

それこそが畜生なんじゃないかと。弱肉強食ってそういう事だと思うんです。巣に食う食われるっていうことじゃなくて。一切心休まることは無いです。何処に転んでも地獄。そんなわけで、やっぱり今回は地獄的なお話です。

音楽について

――

本作の音楽面についておうかがいしようかと思うのですが。

ZUN

まあ全体的にはロック調だと思います。なかなか格好よく作れたんじゃないかと。

――

ラスボス戦で「いつものフレーズ」が流れてくるので、すごくハッとしますよね。ようやく安心できるフレーズに触れられた、みたいな。

ZUN

タイトル画面の曲でも一応分かりづらく仕込んでるんですが、まあよく入れちゃうんですよね。

――

お気に入りを挙げるとしたら?

ZUN

結構それぞれうまく行ってるので不満は少ないですが、ラスボスは良くできたかなって。ちゃんと王道で作れた。格好いいメロディとか、切ない部分とか、普通に遊んでいくといいタイミングでフレーズが切り替わるようにできてると思います。ほかも気に入っているのは多いですね。4面のボスとかね。

――

緊張感というか強者感あります。

ZUN

なんだろう、そんなにテンポも早くないしメロディもそうじゃない筈なのに、妙に早く感じる。ちょっと詰まるようにできてるんですよね。ピコピコ感がありながら、急に焦るような感じを目指して作ってるので、そこが楽しくて好きです。

――

そういえばEX STAGEについても。また組長が出ました。

ZUN

吉弔が搦手なのに対して、直球なキャラですよね。オオカミ霊のボスだし攻撃力が高いほうがいいだろうみたいな感じにして。オオワシ霊はボスも出ないし、ほかの組織から弱いってディスられちゃうけど、黄昏フロンティアさんと作ってる新作でお話のメインになってくるから、楽しみにしててもらえればと思います。

Notes