Febri/Double Dealing Character interview with ZUN

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東方Project14
東方輝針城
Double Dealing Character
発売記念

Touhou Project 14th Edition
Eastern Castle of Shining Needles
Double Dealing Character

前作『東方神霊廟』より
2年のブランクを経て発売された、
東方Project最新作『東方輝針城』。
先日の東京ゲームショウ2013に出演するなど、
にわかに活発な動きを見せるZUN氏を
お酒で釣って、いろいろと話を聞いてきたぞ。
(取材・文・お酌 編集部)


最新作に込められた
〝ゲームへの想い〟

――

今作は、ここ何作かの流れから一歩離れています。どういう方向にするかで悩みませんでしたか。

ZUN

いや、それより前の「作るか作らないか」で悩むことはあります。でも、作ると決めたら迷いはないですね。今回、一番の問題は「解像度を上げるかどうか」でした。

――

というと?

ZUN

まずそれが必要かどうか。面白さが担保されるかどうか。これまで起動していたPCで動かなくなるかもしれない。ひょっとしたら解像度を上げたら、ゲームとしてつまらなくなるかもしれない。そういういろいろな要素の中の折衷案で、自機の解像度だけは変えずに他を変えていきました。避けるのが大変になっちゃいますしね。

――

『輝針城』に至るまでの主な3作品は、信仰をテーマに据えたものでしたが、そこからの変化については?

ZUN

いろいろあるのですが、基本は「斬新なことや奇抜なことはしない」です。

――

5面ボスの弾幕は十分奇抜(操作が左右逆転したり天地逆転したりする)ですが……。

ZUN

あんなのは一ボスが変なことをしてくるだけで、そういうのはアリですよ。そうじゃなくて、ゲーム全体の雰囲気をガラッと変えたり、誰にもわからないシステムにしたりはしないということ。それが必要な未来は何度考えても見えないんですよね。

――

ZUNさんは、同人ソフト製作者のなかでは、ズバ抜けて「他人を楽しませよう」と考えていますからね。

ZUN

商業だと、必ずしも楽しませることが大事ではなくなってくるんですけどね。ユーザーをイライラさせて、我慢できなくなりそうなところで、その解決策をチラ見せする、という手法は今多いじゃないですか。でも、同人ゲームでは、そういうのは意味がない。ある哲学書を読んだときに「一生苦痛であることが一番気持ちいい」的なことが書いてありましたけど、溜めるのには限界がありますよね。

――

芸術によくあったテーマですよね。苦悩から歓喜へ、とか。

ZUN

多くの人は、蜜の味が待っていると思っちゃうんですよ。でも、苦痛の後に蜜が得られることが約束されているかどうかは、わからないじゃないですか。

――

確かに。

ZUN

僕に言わせれば、ゲームで一番楽しいことはクリアすることなんです。ここ2年ほど、かなり多くのソーシャルゲームを遊んできましたが、どのゲームにもクリアと呼べる状態がない。一度プレイを始めたゲームをプレイヤーが辞める理由があるとしたら、それは「飽きる」しかないんですよね。サービスが終わるとかは別にして。でも、それを繰り返したら、ゲームには「満足」と呼べる状態がなくなってしまうんじゃないか。飽きたから次に行く、という物足りない感じを繰り返していくわけです。そういうゲームを1年以上やり続けた結果として、自分が作るゲームはこうでなければいけない、というエッセンスを詰め込んだのが今回の『東方輝針城』です。

――

あ、それでステージ道中はボムをうまく使って切り抜けて、ボス戦ではひたすら我慢してなんとか倒すというバランス構成に……。

ZUN

いやいや、もうゲームのほとんどが我慢ですから(笑)。クリアすることだけが快楽への道筋で、そこへ至るために必要なのが、自分の腕なんです。だから、今回はできる限りシンプルにしています。今の形にたどり着くまでは、いろいろなシステムがありました。でも、どれもしっくりこないし、そもそもシューティングゲームなんだから、細かい部分をいじって楽しんでも仕方ないというか、僕がやることではないなと。僕は、僕だけができることをやらなければいけない。

――

なるほど。

ZUN

シンプルにゲームを楽しめて、すぐ終わってエンディングになる。だからエンディングはすごく重要なわけです。ゲームには目標があって、それを達成したら、多くの人はプレイしなくなる。でも、そういうゲームを止める理由は、飽きたからじゃなくて、クリアしたからなんです。クリアした、満足した、面白かったという気持ちで終わって、次のゲームに行けるじゃないですか。どう終わっても、そのゲームを止める理由が「飽きた」しかなかったら、もうゲームを遊びたくなくなってしまうんじゃないかな。だから、僕は僕の考える面白いゲームを作るんです。

テーマは
原点回帰と二面性

ZUN

今回はいろいろな意味で原点回帰を意識した作品でしたから、ゲームもシンプルに見せる、そのために内容もシンプルにしないといけない。ちなみに、原点回帰するときはレトロ感を出したらダメなんです。原点回帰を掲げてよくある失敗が、うっかり「昔は良かった」が混ざってしまって、単に古いゲームになってしまう。あくまでも、新しく先に進むためなんですよ。

――

『紅魔郷』では『東方』なのに西洋妖怪ばかり出てくる、というネタがありました。今回も人魚が割烹着を着て登場しますが?

ZUN

今回は「妖怪」をメインに据えています。かといって、妖怪モノを作ろうとすると同じパターンにはまりがちで……水木しげる先生の影響なんですかね。だいたい自然崇拝っていうオチになっちゃうんですよ。だから、個無きは『百鬼夜行絵巻』に出てくるような妖怪=付喪神にしようと思いまして。あの絵巻ができた頃は、まだ妖怪という言葉がなかったんじゃないかな。江戸時代になって、絵巻からいろいろ取り上げて命名していったわけです。でも、和風の妖怪もたくさん使っているから、最初はちょっと違うキャラにしたかった。あと「幻想郷には海はないのにね」というネタでもあるんです。だから「わかさぎ」(笑)。

――

「わかさぎ姫」って、いかにもありそうな名前ですものね。

ZUN

考えた結果、ありそうでないのが良かったですね。

――

2面ボスの赤蛮奇は、飛頭蛮……ろくろ首というかデュラハンというか。首が飛んで鮮烈な印象を与えてくれます。

ZUN

ろくろ首も、首が伸びるものと飛ぶものの2種類があるんです。でも、伸びるほうを絵にしたら、ちょっと気持ち悪いかなと。

――

伸びていたら、弾を撃ち込む場所が増えたのに。

ZUN

ドット絵は楽しいかもしれないけど、やっぱり立ち絵が辛くなるので、首には飛んでもらいました。

――

今泉影狼は、狼男、もとい狼女です。妖怪としては超が付くメジャーな存在ですが、3面ボスで登場します。

ZUN

キャラクターとしてはいろいろなゲームで主役級に使われますが、大人しい性格ですよ。彼女もそうですが、今回は二面性がある妖怪を出したかったんです。3面までの妖怪もそうだし、付喪神もそう。そして、それをひっくり返すのが天邪鬼なんです。

――

個人的に、二面性は後から出てきたテーマかなと思ったのですが。

ZUN

確かに、二面性を持ったキャラが出てくるというのは少し後ですね。最初は主人公に2パターンの攻撃方法があって、遊んでいる途中で切り替えられるようなシステムを考えていました。でも、それだと原点回帰じゃなくなるんですよね。

――

確かに(笑)。

ZUN

それに、そうしたところで面白くなりそうじゃなかったんですよ。だから二面性と言うテーマはストーリーにだけ残して、ゲーム性からは除外しました。

――

ちなみに3面までのキャラの衣装に法則性はありますか? 影狼のスカートは花札っぽいので、他も揃えたかな、と思ったのですが。

ZUN

そんなことはないな(笑)。3面だけです。

――

はずれですか。花札ってカードなので、ひっくり返すことができるじゃないですか。そして、今回は下剋上というテーマもあるので、そういうモチーフを採用したのかと思ったのですが。

ZUN

確かに下剋上はテーマの一部ではあるけどね。狼男のデザインは、今さら難しいわけです。変身後の毛深い姿を出すことは正しいんだけど、露出度が上がってしまう。だからその露出度を押さえるために、ロングスカートを履かせたわけです。そして、何かいい絵柄はないか検討した結果ですね。和風で派手目にしようとすると、花札はいい材料なんです。外連味にあふれているけど。

――

それにしても今回、3面までの展開は、後半とはだいぶかけ離れていますね。

ZUN

ストーリーにまったく関係ないものね(笑)。体験版を遊んだだけじゃ、何が起こるかほとんどわからないんじゃないかな。まぁ、付喪神は主人公たちの道具として出ているけれど。

――

ボスの攻撃方法も2パターンあるのかも!?と、身構えたのですが。

ZUN

全部のボスの攻撃パターンを2種類作ることも考えたのですが、労力かかるだけで、別に面白くはないんですよね。作る側も、弾幕パターンを覚える側も大変なだけだし。

下剋上と付喪神

――

シューティングゲームはプレイヤー側が前提のゲームなので、そこをひっくり返す可能性を見せたかったのでは……と思ったのですが。

ZUN

もっと簡単ですよ。これまで作ってきたゲームの登場キャラが、どんどん強い存在になってしまう。強さがインフレしていってしまうので、それをどこかで押さえなければいけない。だから、新しいキャラを出すとしたら、下剋上を狙うキャラということになるわけです。革命みたいなものを起こさないと、世の中はひっくり返らないですから。

――

そういえば、さっきの花札ネタに辿りついたのは、トランプのゲーム「大富豪」に「革命」があるから、という類推なんですよね。

ZUN

もちろん「大富豪」の「革命」をイメージしていたところはありますけど、トランプを衣装イメージに取り入れてしまうとファンシーになっちゃうし、もっと言うと『アリス』になっちゃいますから。

――

今までの魅力的なキャラから一旦離れるため、そして信仰という最近のテーマからも離れるためだったわけですね。でも、下剋上は最初のテーマではなさそうな印象です。

ZUN

最初にあったのは、やはり二面性です。二面性のある妖怪にまつわる、いろいろな資料をかき集めました。ボスも小人にするつもりはなくて、小人と巨人の子供の組み合わせにしたら面白いかな、と考えていました。ただ、それだけだとキャラクターが魅力的にならなかったので、小人で有名なキャラの一寸法師に何かやらせようということになった。

――

天邪鬼の正邪も非常にいいポジションにいますが、キャラとしてはボスではない感じですよね。

ZUN

天邪鬼はいいキャラクターだけど、ボスでも主人公でもないところが美味しいんですよね。正邪のデザインで一番悩んだのは、後ろ向きで振り向いていることなんです。二次創作しようとする人は、正面をどうするんでしょうね?

――

そんなこというならデザイン画くださいよ、載せますから!

ZUN

天邪鬼にはもうひとつデザイン案があって、そっちは上下がさかさまになっていたんです。でも、さすがにそれはないなって(笑)。

――

一寸法師も、元の話だとちょっと策略家といいますか、ヒーローではないですよね。

ZUN

あまりよくないヤツですよね。でも、それ以上に僕の中では打ち出の小づちが面白くてね。本当に唐突に出てきて、一寸法師は大きくなるけど、あれはどう考えても、人間を大きくするための道具じゃないでしょう? あれは一体何なんだろうと考えると、ものすごくネタが膨らむし楽しかった。

――

確かに、唐突なマジックアイテムですよね。

ZUN

一寸法師の話の中における、打ち出の小づちの気持ち悪さたるや、相当なものですよ。急に出てきて、とりあえず一寸法師が大きくなって、めでたしめでたし。でも、その後どうなったんだ!?(笑)本当になんだかよくわからない、鬼のアイテムなんですよ。

――

元々の一寸法師は普通の人から生まれたけど、大きくならなかっただけであって、別に小人族ではないですよね?

ZUN

そこはスクナヒコナから続く小人族という設定で。

――

スクナヒコナはオオクニヌシとセットですものね。巨人と小人のセット。それもあって弾幕に『進撃の巨人』ネタがあったのか……。

ZUN

うん、だから本当は二面性を出すためにも、巨人を出したかったんです。巨人のほうが派手な弾幕もたくさん思いつくし。でも、隠れられないのが問題なんですよ、ストーリー的にね。あと『悲想天即』[sic]でダイダラボッチネタをやってしまったし。なんだかんだで使いにくいキャラではあります。

――

ついでに伺いたいのですが、ストーリーのボスが一寸法師だったから、Exステージのボス堀川雷鼓は、雷に関連する太鼓の付喪神になったのでしょうか。

ZUN

いや、そこは本編とはまったく別で、おまけはおまけなんです。Exをどうするかは何パターンか考えましたけど、ストーリーの流れでは最終的に付喪神が元の道具に戻っていくわけですよ。そうしたら、せっかく出て来たのに可哀想じゃないですか。だから、付喪神が生きられる方法を考えているヤツをExで出す必要があったんです。そうしたら、付喪神たちはこの先も長生きしていける。そんなことを考えるようなキャラは、付喪神の中から出すのがいいと考えました。でも、太鼓にしようと考えたのは開発の本当に終盤です。

――

そうでしたか。スクナヒコナ(『日本霊異記』)→菅原道真(『北野天神絵巻』)という伝承の流れがあるので、雷になったのかという推測もあったのですが。

ZUN

確かに、菅原の道真はのし上がって、追い落とされて、復権したので下剋上っぽさはあるね。でも、やっぱり関係なくて、道具側、楽器側から考えているんです。『百鬼夜行絵巻』にたくさん出てくる和楽器から選ぼうと考えた。3面ボスの弁々と八橋、琵琶と琴は『百鬼夜行絵巻』では必ず繋がって登場しますから、なぜあのふたりが登場するのか、想像しながら楽しんで欲しいですね。そして、今も一番演奏されている和楽器は、和太鼓なんです。太鼓をどうデザインに入れようか考えた結果、ドラムセットになって、近代的なデザインになってしまった(笑)。

――

突然「外の世界」のことを言い始めたので、びっくりしましたけど。

ZUN

「外の世界」にしたのは、打ち出の小づちに頼らないで付喪神化する方法を外に求めたからです。

――

相変わらず優しい世界観を貫きますね。

ZUN

僕は暴力的な話が好きじゃないですからね。

――

シューティングゲームの根幹を否定するような話を!?

ZUN

忘れられがちですが、東方の弾幕は「ごっこ」ですから(笑)。ストーリー性を持たせるために、誰かを殺して誰かを成長させたり、盛り上げるやり方はあるのですが、僕はそういうのはできないんです。だからストーリーは進んでいないですよね。今ある状態のまま変化しているだけ。次のステップには進んでいないんです。でも、話を次のステップには進めようとすると、幻想郷全体を巻き込む話になりかねない。そうすると、それぞれのキャラクターが変化に対応するかどうか、みたいな話になっていくのですが、そんなの疲れるだけですよ。

――

その展開は幻想郷が消滅する流ですね(笑)。

ZUN

世界を終わらせることが前提になってしまうんですよね。もちろん、そういうのが好きな人がストーリーを書けば、爆発的に面白い作品ができるかもしれないですけど。でも、やっぱり僕にはできないかな。ということでFebri読者の皆様は、引き続き『東方茨歌仙』をお楽しみいただけたらと思います。


博麗霊夢

Reimu Hakurei

主人公の巫女さん。
大幣が勝手に動いてビックリ。

わかさぎ姫

Wakasagihime

1面ボス、
人魚の妖怪。

Stage 1 Boss,
mermaid youkai.

赤蛮奇

Sekibanki

2面ボスで、ろくろ首。
首が飛ぶ。

Stage 2 Boss, rokurokubi.

今泉影狼

Kagerou Imaizumi

3面ボス。
毛むくじゃらになるのを気にする人狼。

Stage 3 Boss.

九十九弁々

Benben Tsukumo

4面ボス。
古びた琵琶の付喪神。

Stage 4 Boss.
Tsukumogami of an aged biwa.

九十九八橋

Yatsuhashi Tsukumo

4面ボス。
古びた琴の付喪神。

Stage 4 Boss.
Tsukumogami of an aged koto.

鬼人正邪

Seija Kijin

5面ボス。天邪鬼。
針妙丸をそそのかした。

Stage 5 Boss. Amanojaku.

少名針妙丸

Shinmyoumaru Sukuna

6面ボス。一寸法師の末裔。
打ち出の小づちを持つ。

Stage 6 Boss. Descendant of Issun-boushi.

堀川雷鼓

Raiko Horikawa

Ex面ボス。
和太鼓の付喪神。

Stage EX Boss.
Tsukumogami of a Japanese drum.