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Shooting no Houhouron Part 1
This is the transcript for the first part of the special feature シューティングの方法論 (Shooting no Houhouron) posted on 4gamer.net in December 2005. The interviewer is 八重垣那智 (Yaegaki Yasutomo).
Zone K (Kaeizuka)
2005年10月にレビューを掲載した「東方花映塚 ~Phantasmagoria of Flower View.」(以下花映塚)は,対戦弾幕シューティングという特殊なジャンルながら多くのファンを抱えるタイトルだ。統一された世界観を持ち,完成度が高く,かつ(テスト版とはいえ)リアルタイムのインターネット対戦を実現するというアプローチは,商業流通に乗っていない,いわゆる同人ソフトでありながら,各方面から高い注目を集めている。 また花映塚は,「東方」とカテゴライズされる一連の作品群の一つとして位置づけられており,東方の名を冠したシューティングゲームはここ数年,定期的に登場し続けている。 |
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実はこれは,非常に重要なことだ。4Gamer読者には釈迦に説法かもしれないが,現実的な話として,(FPSを除くと)PC専用シューティングの商業作品というのは,ほとんど存在しないし,また発売もされない。PCというプラットフォームにおいて,本気でシューティングを楽しみたい場合には,アーケードからまれに移植されてくるタイトルを待つか,同人,あるいはフリーウェアといった,アマチュアの作品に頼るしかないのが現状である。 4Gamerが先に花映塚を取り上げたのは――もちろん,オンライン対戦を実現した先進性,ゲームそのもののデキのよさもあるが――これが理由だ。待っていれば新作が出てくるMMORPGなどのファンからすれば,PCは明るいゲームの将来の象徴かもしれないが,シューティング好きにとってはそうではない。これは由々しき事態といえる。 |
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花映塚は,上海アリス幻樂団という同人サークルの作品だが,実際にはプログラム,音楽,(エンディングを除く)グラフィックのすべてが,制作者のZUN氏,一人の手によって作られている。一連の作品群についてもほぼ同様だ。では氏はなぜ,こう言ってはなんだが,商業作品のほとんどない,つまり売れない市場に向けて,同人という立ち位置からPC専用のシューティングを作り続けているのだろうか? 今回ZUN氏から直接話を聞くことができたので,開発の背景からゲーム観まで,じっくりと楽しんでいただければ幸いである。 |
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ZONE K(KAEIDUKA) ■東方花映塚はファンサービス |
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4Gamer |
今日はお忙しいところ本当にありがとうございます。最初は花映塚の話から伺いたいと考えています。まず,花映塚を開発することになった,直接のきっかけは何でしたか? |
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ZUN |
実は,2005年の夏に新作を作るつもりはなくて,「今年は休むかな……」と思っていたんですよ。でも,よく考えてみると,今年って僕が東方を始めて10年目。10周年だったので,ちょっと記念に,ファンサービス的に出したものです。 |
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4Gamer |
花映塚の制作に当たって,最も注意したポイントはどこになりますか? |
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ZUN |
プレイ時間です。プレイ時間から逆算して色々なものを作っています。プレイヤー同士の対戦だと,1ラウンドが1分から2分ぐらいで必ず決着するように調整したり。コンピュータ戦も同じというか,むしろ,コンピュータ戦はもっと顕著で,ある意味“時間だけ”のようにしてあります。 |
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4Gamer |
確かにリプレイを見ていると,コンピュータは,最後はやたらとあっさりやられてしまいますね。 |
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ZUN |
対戦ゲームで,一番何がイヤかって,コンピュータが強すぎたり弱すぎたりすることなんですね。強すぎればムカつくし,弱すぎてもなめられているような感じがする。 あと,コンピュータを強くしていくと,決まったパターンでしか倒せなくなってしまうんです。例えば花映塚のコンピュータ戦で「こちらからの攻撃の送り具合でダメージが増減する」ようにしますよね。こうなると,「この攻撃をこうやる」といった感じになってしまう。分からなかったら一生倒せない。だから,まずそれだけは避けなきゃいけないなと。 一定時間が経過するとコンピュータがあっさりやられるのは,時間というものの道しるべみたいなものです。ただ,それだけだとプレイヤーに気づいてもらえないかもしれないと思ったので,分かりやすくするため,Extraモードでは最初からタイマー出しておきました。そういうのが個人的には一番納得がいくので。 |
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4Gamer |
その意味で,一人プレイは対戦のおまけなんでしょうか? |
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ZUN |
コンピュータ戦は,いわゆる対戦ではなく,わざと反撃を誘って点数を稼いでみたりってところを楽しんでもらうのが一番かな。コンピュータって,どうやっても納得のいく死に方はしてくれないような気がするので。 |
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4Gamer |
やはり理解として,コンピュータ戦は対戦ではないのですね。 |
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ZUN |
ですね。花映塚だと,弾は消せますけど,基本的な防御手段は避けるだけじゃないですか。ゲームそのものを,格闘ゲームのように攻撃と防御を一体化させたようなものに作り替え,「プレイヤーの攻撃に対応を選択して反撃する」仕組みにしないと,おそらく“コンピュータとの対戦”は実現できないでしょう。 いろいろと悩んだんですけどね。コンピュータ戦は,どちらかといえばストーリー読んでてください,ぐらいの感じです。 |
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4Gamer |
では,それなのになぜ形式が対戦なのでしょう? |
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ZUN |
対戦自体が,一番のファンサービスだからです。周囲を見ていて,ファン同士が集まる機会が増えてきたと思ったからですね。オフ会とか何らかのイベントとかで,みんなでちょっと遊んでもらえればいいなと。でも,対戦だけ出してみてもファンサービスじゃないので,一人のときでも遊べるように,いろいろとストーリーを入れて。 だからといって遊び自体がつまんないかというと,そうではなくて,何も考えずに遊んでいれば,楽しいかなってぐらいに。一人でも気楽に遊べるぐらいにはなったと思うんですが。 |
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4Gamer |
対戦ゲームがいくつかある中で,システムを「ティンクルスタースプライツ」(以下ティンクル)方式にした理由を教えてください。 |
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ZUN |
いろいろありますよね,今年ティンクルが出たとか(筆者注:プレイステーション2版「ティンクルスタースプライツ - La Petite Princesse -」のこと)。 ただ根本は,僕がティンクルを好きだってところにありますね。同人というカテゴリのいいところは,商業作品と違って,好きなモノを作れるってことなので。 商業じゃ花映塚の存在は許されない。ある意味同人の甘いところであり,あえて甘えているところかもしれません。 |
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4Gamer |
その割には,ティンクルの「相手との駆け引きに当たって,連爆で組み立てていく厳しさ」のようなものが,花映塚では追求されていない気がします。 |
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ZUN |
ティンクルのそこが面白いかどうかというと,個人的には微妙で,ティンクルは好きですけど,「そこが本当に面白かったか?」って思いますね。むしろ,ティンクル式で弾幕ゲームってのも面白そうというのは,開発当初から当然考えていました。 それに,ティンクルが好きでティンクルをマネているのに,ティンクルにする必要がないのも同人のいいところです。もし花映塚がティンクルの続編だったら許されないですが。 |
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ティンクルを意図しながら,ティンクルが持つ駆け引きのシステムにこだわらない。このことに,まず驚かされた。そのまま話は脱線して,ティンクルのプレイステーション2版がどう,やはり元祖NEO-GEO版こそ最高なのでは,などという方向に行ってしまったので,本記事では割愛。さらに「閃光の輪舞」(2005年,グレフ)や「チェンジ・エア・ブレード」(1999年,サミー)という,シューティングで直接対戦の要素が強いゲームの話で脱線が続く。 面白いと感じたのは,花映塚では直接攻撃で対戦するこうしたゲームよりも,逃げることを優先し,結果として相手に攻撃がいくシステムを理想にしたという話だ。ZUN氏いわく「シューティングで一番好きなのは受け身の部分」とのこと。与えられたものに対処することでより難しい新しい課題が与えられる。敵は倒しに行くのではなく,迎え撃つ,というのがZUN氏のシューティング観のようである。 |
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■花映塚におけるネット対戦の立ち位置 |
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4Gamer |
最終的に花映塚のプレイヤーには,ネット通信対戦で楽しんでほしいということなんでしょうか? |
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ZUN |
いや,通信対戦の最大の目的って何かというと,僕の勉強だったりするんです。ネットワークプログラムを試しにやってみたかった。一度やってみれば,先の新しいことが考えられるかなと。 もちろん,ネットワークプログラムを組んだのも初めてです。しかもあれに要した時間って,1週間か2週間ぐらいですよ。その後が,試すので結構大変でした。遠くの友達を探して試して,色んなバージョンを出してチクチクと。 |
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4Gamer |
現状(編注:2005年12月上旬現在)でそのネット対戦はテストバージョンなのですが,これから完成版としてリリースされる予定はありますか? |
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ZUN |
完成って感じにはならないかもしれないです。一応バージョンアップや,バグを取ったのは用意してある状態なんですけどね。ただ,正式にリリースすると,正式である以上,どんな人でも遊べないといけない。それは,ハードルがかなり高いです。 |
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4Gamer |
「とりあえずこのポートを開けてね」というのが,初心者層にとって高いハードルになっているのは,商業のオンラインタイトルにもついて回っている問題です。 |
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ZUN |
ええ。ネットワークに対しての知識とか。ポートを開けるとか,プレイヤーにそのあたりを全部求めてしまっていいのかといえば,かなり難しいですね。 |
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4Gamer |
では,用意できていると仰った新バージョンの対戦パッチについて聞かせてください。懸案の,同期ズレの改善は行われますか? |
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ZUN |
同期ズレを完全になくすのは難しいですね。次のパッチではかなり改善していますが,100%は無理だと思います。絶対ズレないと保証することは,たぶんできません。「もしズレてしまったら,タイトル画面に戻ってくれれば,もう一回きちんと同期を取れることは保証しますよ」くらいが限界かなと思います。 |
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4Gamer |
だとすると,同期ズレが目で見て分かるようになるとかできるようにするとか,そういった対処をする予定が? |
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ZUN |
同期ズレを目で見て分かるようにするのは簡単ですね。「おかしくなりました」って画面に出すのはきっとできる。確かに,そういう対処の仕方をするかもしれないですね。 |
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4Gamer |
それはいつくらいのリリースになりそうですか? |
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ZUN |
パッチ自体は一応作ってあるんですけど,リリースは年末とか来年とかになると思います。簡単に対処できる不具合を直したものは出るでしょうね。最終的には,ちゃんとうちのサークルのWebサイトからダウンロードできるようにしたいとは考えています(編注:2005年12月上旬時点で,ネット対戦パッチは,上海アリス幻樂団からではなく,ZUN氏の日記からダウンロードするようになっている)。 |
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■「スコア」という楽しみ方 |
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4Gamer |
花映塚全体として,プレイヤーからの反応はどうなんでしょう。難しい,簡単でいうと,簡単のほうが多いんですか? |
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ZUN |
簡単という意見は,花映塚に限らずあまり来ないんですよ。反対に,どんなゲーム作ったときでも必ず「難し過ぎる」というメールが来ます。花映塚でも結構多くて。 簡単な人は何も言わないんでしょうね。むしろ「ちょっと物足りないな」「これじゃすぐ飽きちゃうな」って考えるくらいで,わざわざ「すぐ飽きました」とメール送る人はいない。だから「難しくてクリアできねえよ」という怒りがメールとして届くんでしょう。 |
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4Gamer |
花映塚に「飽きた」と言っている人は,一人プレイに言及していることが多いように感じます。 |
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ZUN |
今回は一人プレイをそんなに考えていませんからね。一人プレイは対人戦とは違うもので,先ほどもお話したように,時間内でどれだけ稼げるかになりますから。それをやり出すと,結構面白いですよ。 |
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4Gamer |
確かにプレイしていると感じますけど,プレイのやり方をちょっと変えただけで,だいぶスコアが変わってきます。 |
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ZUN |
スコアを稼ぐには,敵に反撃させるように,自分からわざと攻撃を送っていくのがコツですね。ちょっと難度が上がって面白いくらいです。 時間だけがコンピュータを倒せる条件だから,最初のうちに攻撃を送ると絶対に反撃される。そういう仕組みが分かってると,また面白くなってきて。対戦シューティングなのに,そんな遊び方でいいのかというと,自分でもちょっと疑問ですけど。 |
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4Gamer |
スコアが伸びるのを楽しんでほしいというところに,ゲーム性のキモを置いているということなんでしょうか? |
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ZUN |
ゲーム性は色々なことが考えられるし,色々なことが言えるんですが,ゲーム性の原点というのは――変かもしれないですけど――スコアだと思うんです。何かをやった結果として,これは良かった悪かったって明示的に分からせる。それがゲーム性なんじゃないかと。 弾を射つ爽快感があるとか,避けるときの技術とか,そういうのはそのゲーム固有のテクニックだったり個性だったり,それに近いものだと思うんですよ。コレをやったから何点で,アレをやらなかったから何点低い。そういうことで「点数を高めるためにはどうすればいいんだ?」と考えることが,ゲームの原点のような気がするんですね。 別に花映塚だけに限った話でも,シューティングに限った話でもなくて,スコアを稼ぐと「あなたは素晴らしい」って称えられる。数字で出ていなくてもいいんですけど,それがいわゆるスコアじゃないかと。ゲームをプレイしていて「ああ,これが正解なんだ」と分からせるものがスコアだと考えています。 |
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4Gamer |
ただ,ゲームの本来の目的とちょっと違う,普通はやらないようなベクトルに進むと,スコアを多く稼げるようなゲームが多いと思うのですが。 |
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ZUN |
そうですね。スコアがゲームとあまりにも離れてしまっていて,敵を倒さないほうが点数が高いとか,もう本末転倒なんですよ。 それをなくしたいっていうか,スコアを上げるのがいいんだということを,もうちょっと分からせてあげたいですね。今のゲームって,どうしてもそういうわけにいかなくなってて,それがプレイヤーをゲームから遠ざけるというか,理解しにくくなって,みんな投げ出したくなってる。スコアなんてどうでもいいよ,って話になってしまう原因だと思うんですよね。 |
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4Gamer |
スコアによる評価の信頼性が高いものが,良いゲーム足り得るということでしょうか。 |
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ZUN |
今,携帯ゲーム機で頭脳パズルのようなゲームが出ているじゃないですか。あれってものすごく単純なゲームで,ちょっとしたミニゲームみたいなものをやると,スコアが出ます。100点とか300点とか。あれは点数が高いほうがいいわけですよ。 だから,スコアを高めるためにちゃんと答える。テストに近い状態ですけど,あれはあれでスコアを競うゲームになってるんです。あれはもう,スコアを稼ぐにはどうすればいいか,スコアが高いのはなぜかすぐ分かるから,普通の人でもすんなり入れる。何の説明がなくても,スコアが出て納得いけてますよね。花映塚だと,コンボボックスがちょっと複雑だったかなと反省もしてるので,ああいう,単純なところに戻ってもいいのかなと考えています。 |
Zone Z (ZUN)
ZONE Z (ZUN) ■最初はゲームミュージックから始まった |
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4Gamer |
ここからはZUNさん本人の話を聞いていきたいと思います。まずは,ゲームを作ることになったきっかけから教えてください。 |
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ZUN |
単純に「ゲームが作りたい」ってのはあったんですけど,それよりも,音楽を作りたかったてのがあるんですよ。ゲームミュージックを作りたくて,仕事にもしてみたかったんです。それで音楽の勉強して,作って。でも,それがゲームに流れるアテはない。だったら,自分の音楽がゲームに流れるように自分でゲームを作ってしまおう。その感覚が最初です。 ただ,プログラムを勉強しなきゃゲームを作れないから勉強して,今度はゲームには絵が必要だからドット絵描いて……。小さなゲームを実験で作って,友達にちょっと見せてみたりしてました。 |
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4Gamer |
そこから東方が生まれた? |
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ZUN |
ゲームの中でも,シューティングを作りたいってのもあったから,そのままシューティングにシフトしてしまっただけってのもあるんですけどね。最初に作った東方(筆者注:「東方靈異伝~The Highly Responsive to Prayers」,1996年)は,別に発表する気はなかったんです。大学の学園祭で出していただけというか。 でも,出してたらいつの間にか「コミケに出そうよ」(編注:コミケとは「コミックマーケット」の略称。国内最大の同人誌や同人アイテム即売会)って話になって。それまで行ったことなかったんで,初コミケで初売り子でした。50本ぐらい持っていって「そんなに遊ぶ人いるかな?」と思ってたら,すぐ売り切れになって,意外とゲームやる人いるんだなぁと。 別に同人ソフトを作ろうと思って作ったわけじゃないんですよ。フリーウェアとして意識したようなところもないですね。ただゲームを作りたかった。それで,大学を卒業してゲーム会社に就職したこともあって,同人というか,個人ではもう作らないだろうと思ってました。 |
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4Gamer |
その後,開発を再開したのはどのような経緯からですか? |
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ZUN |
会社で非常に忙しい状態が続いて,それから抜けられないことでストレスが溜まったときがあったんですよ。それを発散する方法として同人ゲームを思いついたというか。 その前提として,もう1回同人で何か出してみようかなってのはありました。音楽専門でやろうと思っていて,音楽サークルとして申し込んだらコミケの抽選に落選して。せっかく音楽CDを作ったのにな……と思って,「夏まで時間あるよな」「次回はゲームにしちゃおうかな」「ゲーム作っちゃえ」とうっかり作ってしまったのが「東方紅魔郷」です。 1回作っちゃうと,次も作りたくなっちゃうことが分かってたから,なかなか切り出せなかったんですけどね。今はもう作らないといられない状態になっちゃってます。体力的にはキツイし,つらいですけど,かといって専門でこれをやりたいとも思わないので,同人でいるという感じですね。 |
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4Gamer |
東方そのものを仕事にしてしまうと,仕事で抱えるようなストレスが東方でも生じてしまう? |
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ZUN |
ストレスになっちゃうでしょうね。たぶん自由が利かなくなる。実験的なこととかできなくなります。食っていかなきゃならない。「プレイヤー様は神様です」ぐらいの勢いで作らないと。作り手として偉そうな言い方もできなくなるなぁ(笑)。 僕がいいと思っていることをやっている,このスタンスは崩したくないです。プレイヤーの人もそれを納得して見てもらっているのかなと。仕事とは切り分けていますね。生活は大変ですが。 |
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■東方の作り方 |
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4Gamer |
ゲームを制作するという全体の中では,何を最重要視していますか? やはり,先ほど仰っていたスコアでしょうか。 |
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ZUN |
スコアもそうですね。ただ,「最重要と考えているものは何か」といえば,ちょっとクサい言い方ではあるんですが「作品性」というか,そういうのが大切だと考えています。東方という作品を見たときに,「こういうシューティングゲームがある」という感覚よりは「東方がある」と言われたい。これがゲームじゃなくても「東方がある」となっていれば,それが最も理想的です。もっと大きな「東方」があれば,それを表現していきたいんです。もし仮に東方の音ゲーを作ることになっても,何の違和感もなく「東方」として受け入れられるような形でありたい。 |
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4Gamer |
その「らしさ」を実現しているものは,いったい何でしょうか? |
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ZUN |
単純にキャラだけとかでないのは確かですね。作者の考え方というか,哲学というか,そういうものが作品に滲み出ていれば,どの作品を見ても「東方」として受け入れられるんじゃないかなと。 |
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4Gamer |
実際の制作作業ではゲーム性というか,ルールやシステムから肉付けをしていくような感じだと思うのですが。 |
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ZUN |
普通は大体そうなってしまいますね。ただ,それでうまくいけばいいんですけど,それだと結構運任せになってしまいます。だから,ちょっと逆の発想をしてみて,最初に,欲求というか大きな何かがあって,そこから「これが面白い」というものが形になって,システムになっていくのがいいですね。それが本当の理想というか。 |
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4Gamer |
もう少し具体的に説明していただいてもいいですか? |
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ZUN |
例えば縦にスクロールして敵を射つゲームがあると,今だったら自機がどういうショットを射てて,敵がどのぐらい現れて死んで,どういう弾出してといった感じで考えていくのが自然に見えます。 でも,本当はもっと前に,「戦闘機で敵を倒すようなゲームを作りたい」「技術的に大型筐体が作れないから,2D上に落とそう」「画面が動かないと寂しいな」「じゃあスクロールさせよう」って,誰かが発想したはずです。発想を繰り返してゲームを作っていく。そうやって完成したゲームが,最も自然なゲームで,本当に楽しいゲームだと思うんです。「地上と空中の敵を倒すために,ゲーム性をこう変えよう」とかは,むしろ後から出来上がるものだと思いますね。コアの部分は,そこじゃないんじゃないかと。 今はちょっと,そこから離れてるゲームが多くて,プレイヤーも目が肥えているというか,そこから見ないですよね。 |
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4Gamer |
作り手の都合というか,お約束をプレイヤーが理解し過ぎているということですかね。 |
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ZUN |
お約束を気にし過ぎで,初めて遊んだゲームで,まず敵の弾の射ち方から見たりとか。その時点でちょっと変わってるなと思っちゃいますね。 東方は,そうならないよう意識してはいるんです。東方だと,最大の目的が――目的というと変ですけど――敵を魅力的に見せることなんですよ。 敵を魅力的に見せて,倒したい,その先を見たいとプレイヤーに思わせることを考えていくと,ストーリが必要になってくる。練習させるためには,ボス自体が魅力的でなければならない。だから,魅力的に見せるための攻撃を考え出す。その結果―― |
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4Gamer |
弾幕一つ一つに「スペルカード」として名前が付いた? |
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ZUN |
そうです。どうやって敵を魅力的に見せるかというところから,どうやったら魅力的になるかを考えていって,「弾幕に名前を付けて必殺技みたいにすれば,キャラクターが立つな」と。そういう流れで新しいシステムができてきたんです。 弾幕一つ一つに名前を付けるというのは,東方でしかやってないし,東方が初めてなのは間違いないと思います。でもこれって,「奇抜なゲームシステムないかな」「シューティングで新しいアイデアないかな」って考えて,思いついたわけじゃない。 |
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4Gamer |
確かに,スペルカードという形で初めから名前が付いているから,プレイヤー同士の意志疎通がしやすいですね。 |
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ZUN |
話がしやすいですよね。名前があるから,「○○はどうやって避けるの?」って聞ける。あれって奇抜なアイデアでも何でもなくて,初めてのアイデアではあるけども,「自然」ですよね。 現れたときに,自然に受け入れられるというのが,本当に斬新なアイデアだと思うんですよ。ただ新鮮さを求めすぎると,変なことばかり考えちゃう。変なことって,最初は皆「新しい」って喜ぶけど絶対定着しないんです。ダメなんですね。 |
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4Gamer |
本来であれば回避したい弾幕という存在を,見ないで死ねるかという存在にまで昇華させているのは,個人的に非常に面白いと感じています。 |
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ZUN |
ボムを使わないと避けられないけど,スペルカードの弾幕を見たいからボムは使わない――こういう人がいてもおかしくないなって感じにしています。 |
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4Gamer |
ただ,スペルカードと類似のものが過去にまったくなかったかというと,そうでもないような気もするのですが。 |
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ZUN |
「何もないところから生まれた発想」なんて,世の中にそんなものは存在しないと思います。だから,必ず“何か”があって,突き詰めていくとそれにたどり着けるでしょう。 スペルカードの発想は,どちらかというとRPGとかのボスが出す攻撃,あれの感覚から来ていますね。ほかのジャンルのゲームだと当たり前のことというか,格闘ゲームだと,画面にこそ表示はされませんが,キャラクターが必殺技の名前をしゃべりますよね。技の名前もありますし。 あれがなぜシューティングになかったかというと,シューティングが,ボスならボスというキャラの魅力を出そうとしていなかったから。だから,そういう発想に至らなかったと思うんですよ。キャラの魅力からも新しいシステムが生まれるんです。 |
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4Gamer |
色々な要素は,自然な形で結びつけられゲームになっていくということですね。 |
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ZUN |
自然に結びついていれば,プレイヤーは受け入れやすい。東方で,弾幕に名前が付いていることをプレイヤーが受け入れてくれているのは,キャラの魅力を引き出すという目的と自然に結びついているからだと思います。ゲーム世界にあることが当たり前になっているじゃないですか。それってすごく大切なことだと思うんですよ。 |
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4Gamer |
では,受け入れづらい例というのはどんな感じでしょう? |
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ZUN |
受け入れづらいというか,最近のゲームで,ちょっと気になって「つらいな」と思うのは,RPGですね。 RPGだと,作り込まれた世界があるのに,戦闘シーンは戦闘シーンで,別途新しい遊び方を考えなきゃいけない。こういう風潮が僕にはつらい。ボタンでタイミング操作させたりとか。あの瞬間にプレイヤーが冷めないかなぁと。 せっかくRPGの物語世界に没頭しているのに,急にゲームチックな要素が出て来たりすると,ゲームがそこで分離しますよね。あれって,開発する側も別チームで分かれて作ってると思うんですけど,その統一が取れてないのがさも当たり前のようになっている。評価する人まで当たり前として受け入れて,「ストーリーがどう,戦闘シーンのゲーム性がこう」と言っている。そうなると,ゲームがおかしくなっている,もしくは分解寸前だと僕は感じるんです。 |
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4Gamer |
シューティングだとどうですか? |
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ZUN |
やっぱり感じますね。よくあります。自分でも陥りがちですが,スコアのためだけのシステムなんかその最たるものかもしれません。そういうゲームって,「パズルゲームのようなものだから」と言われることが多いですが,パズルゲームにはパズルゲームの自然なシステムが存在しているんです。自然な形でパズル的な要素が現れるのであればゲームは統一性が取れますけど,無理矢理入れたのであれば,それには分裂しているイメージしか持てませんね。 と,微妙に脱線気味になったところで,さらに「レイディアント・シルバーガン」(1997年,トレジャー)と比べて,後発の「斑鳩」(2001年,トレジャー)が,いかに「自然」なシステムとして昇華されているかを,熱く語り合ってしまって大脱線。 ZUN氏は,前者における赤青黄の3色に塗り分けられた敵の不自然さと,後者の白黒で統一された敵の自然さの落差を説明してくれたのだが,心から納得である。「出ているものはゲームなんです。プレイヤーはゲーム性に対価を支払うのではなく,ゲームにお金を使う。いくらロジックがよくても,それを受け入れられるかっていうのは別の話です」(ZUN氏)。 |
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……さて,第1回はひとまずここまで。 今回は花映塚とZUN氏本人について聞いてみたが,全体からすれば,これでもまだ前振りにしか過ぎない。週明けの第2回は,氏の語るがまま,「東方」の濃厚な真実を掘り下げた,インタビューのヤマ場を迎える。楽しみに待ってほしい。 |
Source
- ―特集― シューティングの方法論 第1回 (Zone K)
- ―特集― シューティングの方法論 第1回 (Zone Z)