Strange Creators of Outer World/Introduction of Previous Works/Imperishable Night/Fragment of Phantasy

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幻想のもと③

Fragment of Phantasy

「妖々夢」では冥界という幻想郷以外の場所が出てきたが、
「永夜抄」で登場した月の都もまた、幻想郷の外にある幻想の場所だった。
そこから先に拡がる世界とは――。

「永夜抄」のラスボス蓬莱山輝夜は、日本人なら誰もが聞いたことがあるだろう「かぐや姫」……日本どころか世界最古の物語文学と言われる『竹取物語』の主役、「かぐや」が基となっている。最近は某携帯電話会社のCMでよく見る気がするアレである。このことは、まあ名前の読みや使用するスペルカードをみれば、すぐにピンとくるだろう。一方、同じ6面のボスではあるがいまいちピンと来ない方のキャラが八意永琳だ。だが、東方Projectの世界観を形作るうえでは、どちらかというと輝夜よりも永琳の立ち位置の方が重要ではないだろうか。それは、永琳がなにをモチーフに形成されているかに思いを巡らせることで、明らかになってくる。

古代――どこまで?

永琳についてのヒントはやはり名前と、5面で永琳と禁呪の詠唱チーム――魔理沙とアリスが出会った際の会話部分にある。

<quot>「あなた達は古代の力のコピーを
使用しているみたいね。
まだ人間が居なかった時代の無秩序な力。
あの頃が懐かしいわ。
能力にも特許を認めるべきかしら」</quot>

古代、それも人間が居なかった時代とは、いったいいつのことだろうか。これが名前と繋がって意味を持ってくる。

八意とは日本の神様の名前だ。『古事記』や『日本書紀』では「思兼神(オモイカネノカミ)」と記され、その『記紀』に並ぶ日本の史書『先代旧事本紀』では「八意思兼神(ヤゴコロオモイカネノカミ)」として記される智慧の神様のことを指す。「妖々夢」では「東方」らしく和風の幽霊と西行ネタが仕込まれていたが、ここから一気に日本神話へと話が拡がっていく。

日本の神様

日本の神様観は「八百万の神様」、もちろん読みは「はっぴゃくまん」ではなく「やおよろず」つまり全てのものに神様が宿るという考えである。そして有名な神様は、なぜ有名かと言うとよく知られたエピソードを持っていたり、有名な神社に祀られているからと言える。なお、ここからは敬称略で失礼する。

たとえば国産みの神話で語られるイザナギとイザナミ、太陽と同一視され、天岩戸に隠れることで有名なアマテラス、その弟で暴れん坊のスサノオあたりが特に有名だろうか。他に、お稲荷様のように神社は有名だけど、祀られている神様、ウカノミタマのようにいまいち名前が知られていないものもある(※たしかに仏教系の寺院では荼吉尼天……お狐様そのものが祀されてはいるが)。オモイカネについての有名なエピソードは、やはり天岩戸絡みだろう。アマテラスが天岩戸に隠れた際に、神々にどうやってアマテラスを外に出すか、という策を授ける知恵の神として登場するのだ。

なんとなくではあるが、ものすごく詳しいとか興味がある人以外は、イザナギ・イザナミあたりが一番古い神様ではないか、と思っていそうな気はする。有名さもさることながら「国産み」、つまり天地創造に関わっているというイメージが「最初にいた神様」として印象付けているのではないだろうか。だがこの二柱よりさらに以前の代の神様たちがいるのだ。……ただ、書物によっていろいろ記述が揺れたりするので、ここでは『古事記』に基づいて話を進める。

別天津神と神世七代

ということで『古事記』によると、イザナギとイザナミは十二代目の神様ということになる。もちろん前だから偉いとかそういうことではないのだが、そんなに? という気になる人もいるのではないだろうか。まず天地開闢、つまり世界が初めて生まれた時に登場したのが「造化の三神」と呼ばれる神様だ。

・天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)

・高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)

・神産巣日神(カミムスヒノカミ)

その次に現れた「宇摩志__備比古__神」(ウマアシカビヒゴコチノカミ)「天之常立神」(アメノトコタチノカミ)を加えた五柱を、天津神の中でも特別な存在として「別天津神」(ことあまつかみ)と呼ぶ。この後に表れる「神世七代」と呼ばれる十二柱の七代目の神様が、イザナギ・イザナミなのだ(※なお、『日本書紀』では「神世七代」こそが天地開闢の際に現れた神様としている)。これがイザナギ・イザナミを十二代目の神様とする理由である。

ようやく話は永琳に戻る。というのも、オモイカネは別天津神に挙げた2番目のタカミムスヒノカミの子とする説があるからだ。つまり代で言えばイザナギ・イザナミよりも古い神である可能性がある。ただ、神様の年齢というのは長く、特に別天津神ともなると億単位とする説もある。なので、代がだいぶ後だからと言って、先に誕生したとは一概には言えない。ただ、人類誕生とされる6500万年前よりも以前から存在しているという永琳の台詞は、こういった部分に裏打ちされていると思われる。

神様の分類

神様の話を続けるために避けて通れないのが、天津神と国津神についてだ。これは、日本神話に登場する神様の分類だ。本稿に既に登場している気もするが、関連するキーワードも一緒に挙げておく。

天津神(あまつかみ)
高天原にい神々、または高天原から天下った神々のこと。

国津神(くにつかみ)
天津神が高天原からやってくる以前から、葦原中国にいたとされる神々。

高天原(たかまがはら)
天地開闢以来、神々が住む場所。天岩戸も高天原にある。

葦原中国(あしはらのなかつくに)
高天原と黄泉の国の間にある世界。日本。

黄泉の国(よみのくに)
死者の世界。葦原中国と繋がっているとされる。

ということで、天津神の中でも特別な別天津神の子であるオモイカネは、当然天津神ということになる(ので、永琳についても設定的には同様に考える)。また、小説「儚月抄」によれば、月の都を築いたのは、穢れを嫌って地上を離れた月夜見と彼女の親族及び一部の者で、永琳は都の創設に大いに力を貸したとされている。つまり月の都に住んでいるのは、主に天津神なのだ。あと兎。輝夜が神様かどうかはよくわからない。同じく「儚月抄」で重要なキャラとして登場する綿月豊姫・綿月依姫の姉妹も、トヨタマヒメとタマヨリヒメという姉妹の神様をモチーフにしており、それはどちらも天津神である。

また、オモイカネはタカミムスヒの子とする以外に、常世の神であるとする説もある。常世、つまりあの世の神なわけで、この辺りからも月の都が持つ静かなイメージと繋がる。

地上に残っている神とは?

こうしてみると、幻想郷を含め、地上は神様が見放してしまって、みんな月に行ってしまったということになる。だがもちろん「みんな」ではない。もともと地上にいた神様だってたくさんいるではないか。そう国津神である。「永夜抄」では、あくまで神様の世界と東方の世界観を接続するまでだったが、ここからさらに2作品を経た後に、満を持して国津神が登場する。それが「東方風神録」だ。「風神録」の話を始めるとページが無くなってしまうのでここでは省くが、「東方輝針城」では一寸法師の末裔という設定のラスボス・少名針妙丸が登場する。だが名前からは国津神の中心的な神・大国主とともに国造りをしてまわった神・少彦名神の末裔とも想像できる。ともかく、「風神録」以降は天津神と国津神とが両方登場するようになったので、ちょっとピリッとした空気が流れる事もある。「東方非想天則」では、「永遠亭には色々神様がいるって聞いたけど」(原文ママ)という趣旨のセリフを洩矢諏訪子が言う。そう何人も居ないだろうに「色々」とはなんとも気になるが、少なくともここで言われる神様の一人は永琳を指すと思われる。また鈴仙が諏訪子に「土着神ってどうしても潰しきれないってお師匠様が言ってました」と言う一幕も。もちろん鈴仙が師匠と呼ぶのは永琳しかいない。

とはいえ「風神録」以降の作品は、別に国津神と天津神がギスギスする話では別にないのでやはりこれらも想像のスパイスとして楽しむくらいがちょうど良いのではないだろうか。