Strange Creators of Outer World/Introduction of Previous Works/Perfect Cherry Blossom/Fragment of Phantasy

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幻想のもと②

Fragment of Phantasy

「妖々夢」を彩るトピックとしては、「西行」や「波長」など
魅力的なものがいくつもあるが、それぞれ謎も深い。
というわけで、そこまで深くはないガイド的コラム第2弾。

東方Projectに散りばめられた幻想のかけらを、なんとな~く調べたり想像してみたりするヒントとなるようなコラム原稿第2弾「妖々夢」編。またラスボスの話から始まって恐縮だが幽々子について。彼女の名前は「西行寺」幽々子であるが、西行寺という名前の寺は無い(と思う)。ただし、それなりに関連の深い寺が1つある。大阪府南河内郡の弘川寺(ひろかわでら)だ。

[1]

西行って?

弘川寺は665年、役小角(修験道のスーパースターで、超人的なエピソードをいくつも持つ。鬼神をも従える法力を持ち、海の上を歩くなど)によって創建されたと伝えられる寺で、寂れていた佇まいを歌聖・西行が気に入って最晩年を過ごし、そのまま没したとされている。今も西行の墓があり、18世紀中盤には西行の墓を訪ねた僧によって西行堂というお堂が建てられた。この寺の名前なら、幽々子のスペルカードに「幽曲『リポジトリ・オブ・ヒロカワ‐○○‐』」として登場している。Repositoryは埋葬所の意だ。

西行は1118年生、1190年没。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動していた人で、武士・僧侶・歌人などの面を持つ。「百足退治伝説」で有名な俵藤太こと藤原秀郷を先祖に持つエリート武士で、元の名は佐藤義清(のりきよ)。幼いころから文武に優れ、剣術、槍術、弓術、流鏑馬の達人であるだけでなく、蹴鞠や和歌も得意だった。さらに有職故実――古来からの礼儀やしきたりにも通じていたという。これだけでも十分エリートっぽいが、さらに言うと上皇(皇位を譲って引退した元天皇)を警護する「北面の武士」を務めていたこともあるほどだ。「北面の武士」として採用されるには、見栄えがよいことが条件とされていたことから、西行はイケメンだったという設定にされることも多い。話が逸れた。そんなわけでいろいろと単にエリートなだけでなく優秀だった西行は、鳥羽上皇や崇徳天皇からも評判が上々であったし、宮中の女性からも人気があった。同年代の武士には平清盛や源義朝など名だたる武将がおり、交流もあった。だが、23歳の折に突如として出家、そういった俗世のことからは離れていったのだ。出家後の西行は旅の中に暮らし、いろいろな場所で多くの和歌を詠んだ。その達人ぶりは「新古今和歌集」に、選ばれた者の中でも最多の94首が入るほど。これが「歌聖」と呼ばれるゆえんでもある。そして、さらにさまざまな逸話を残していったのだ。

勝ち組人生街道をまっしぐらに歩んでいたはずの西行が出家した理由は、正直なところよくわかっていない。親しい友人の死がきっかけだとか、高貴な女性に失恋したことが原因だとか、いろいろ言われたりしている。当時の大きな時代背景としては、平安の世が終わり、鎌倉幕府が開かれようとしていた。権力の中心が貴族から台頭してきた武士に移りつつあったこと、また権力基盤の揺らぎに伴って治安が悪化していたこと、そして6世紀に輸入された仏教がかなり定着し、先述の治安悪化や武力が物を言う世界などの現実化が末法の到来――釈迦の教えが廃れたハチャメチャな時代が来ちゃったよ、とする思想を後押しした。文学面においては貴族的な「をかし」や「もののあはれ」、しみじみとした趣に重きをおくのんびりした価値観から、無常、全ての事象は生まれては滅し、常に移り変わっていく、とする価値観が主となっていく。そういったことを根拠に、既存の価値観が変わっていく中で、それにしがみつかず別の道を求めて出家した、という説もまことしやかに語られる。ただ、理由はともかく西行が詠んだ歌は、この無常抜きには語れない内容のものが多く、西行の歌集『山家集』にはそれが特に現れている(上の句に桜が多く用いられたりする)。そしてその歌は、「妖々夢」本編とも深く結び付いているのだ。

「妖々夢」では各ステージ開始時に、ステージのサブタイトルが表示されるとともに、ストーリーやキャラの紹介などが英字で表示される。そして5面では、

願わくは 花の下にて 春しなむ
 その如月の望月のころ

と、前述の『山家集』に収められている西行の有名な歌が表れる。これは「どうせ死ぬなら春の桜の下で死にたいなあ、あと二月中旬の満月の頃だったらいいなあ」という内容だが、ここでいう二月は旧暦の二月という意味以上に、釈迦が入滅した日にひっかけられている。5面に来てぐっと「死」そのものがテーマとして前面に押し出されていることがわかるだろう。また、6面の開始時には同じく西行が詠んだ

ほとけには桜の花をたてまつれ
 我が後の世を人とぶらはば

という歌が表れる。こちらもやはり「死」を題材にしたもので、「もし私が死んだら、桜の花をお供えしてほしいな、あ、もし私の来世のことを思って弔ってくださるというなら」という感じの内容だ。6面ではさらにもう1回西行の歌が表れるのだが、そこまで述べてしまうのはちょっと野暮なので、実際にプレイして見ていただきたい。

西行と○○

常人にはできない決断を下したからか、はたまた桜の和歌が人気を呼んだのか、西行は逸話や伝説が語り継がれるような人物として後世へ伝わった。江戸時代あたりには、単に歌人として尊敬を集めるというよりは、その生きざままで含めて尊敬の対象だったようだ。西行と桜、西行と歌、西行と旅、西行と仏僧などなど、いろいろなテーマで語られることがある西行。「妖々夢」も「西行と桜と死」を下敷きにした創作と言えなくはないが、どちらかというと「桜と死」をテーマに創作するに当たって、「西行」というスパイスが隠し味的に散りばめられたというのが、発想の順番的には正しそうな気はする。ここに挙げたネタ以外にもたくさんの西行ネタが盛り込まれているので、気になった方は調べてみると、無駄な知識が増えて人生が豊かになるかもしれない。

ギリギリの可視光線

「妖々夢」で避けて通れないもう一つの大きなネタは、やはり八雲紫だ。Windowsの初期2作品には色に関係するネタがあちこちに用意されており、それらの色は虹を思い出していただければ、気づくこともあるだろう。国や地域によって色の数が違うが、今日の日本では以下7色が挙げられている。

赤/橙/黄色/緑/青/藍/紫

さて「『紅』魔郷」では「レミリア・『スカーレット』」が登場し、次回作では橙(オレンジ)の名を冠する敵が2面で登場した。(仮に妖夢の服が緑、青は……一応これも幽々子の服の色ということにしておいて)、エキストラでは藍、ファンタズムでは紫と、徐々に虹の外側の色から内側の色に変化していく。内側と外側。これもなんだか幻想郷という世界を想像する言葉ではないだろうか。そして、赤の外側の光線には「虹として数えられる色」が無い。だが実際は「無い」のではなく「あるけど見えない」、不可視な光線の領域なのだ。同様に、紫の内側も「あるけど見えない」領域である。

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ただ、先程から内側とか外側とか書いてはいるが、虹の「見えている部分」としての内側、という考えもあるので、どこが内でどこが外かは解釈の分かれるところだろうし、そもそも虹の色自体は「連続した無限の色」とでも言うべきものであって、実際にはハッキリした区分けは無い。また、日本で虹が7色と言われるようになったのも近代以降のこと。

さらに色についての話だが、自然光には紫色は存在せず、赤と青の光を混ぜる必要があるという。その場合、一番内側の色として挙げられるのは「菫色」と言われることもある。はて、どこかで最近見た名前ではないだろうか。

こうして「もと」の話をダラダラ続けても良いのだが、紫については「東方香霖堂」第二十六話でたっぷり語られているので、そちらを読んでいただいた方が楽しめると思われる(宣伝)。

アリスという幻想

ZUN氏のサークル名にも入っている「アリス」という名前。英語圏では一般的な女性の名前の一つだが、なんの思い入れも無い名前のキャラを何度も登場させたりサークル名に付けたりするだろうか。ということで、ちょっとだけ東方関連におけるアリスについての情報を整理しておく。

東方Projectに初めてこの名前が登場したのは、5作目、つまり「紅魔郷」の前作である「東方怪綺談」にさかのぼる。この時3面のボス「死の少女 アリス」というキャラクターが登場している。そう、この時も「アリス」は3面のボスだったわけだ。ただ「怪綺談」のアリスはエキストラステージのボスとして再び登場し、そちらでは「魔法の国のアリス」と名前が変化している。名前以外ではグラフィックにも変化があり、エキストラでは大きな本を抱えた姿で登場。赤、青、紫、緑、黄の魔法を使って攻撃してくる。うーん、7色じゃないな。この時は「最近アリスという言葉をよく耳にする」ことからキャラ作りに至ったことが書かれている。

また、「紅魔郷」制作以前に作曲していた音楽で、曲のジャンルに「Alice」「アリスミュージック」と命名しているものがある。

・「夢消失 ~Lost Doream」(東方夢時空)

・「アリスマエステラ」(東方幻想郷)

・「不思議の国のアリス」(東方怪綺談)

・「Magic of Life」(オリジナル)

あたりが「アリスミュージック」とされており、こういった旧作の曲は音楽CD「幺樂団の歴史」シリーズに収録されているので、ご興味のある方は聴いてみるといいかもしれない。

  1. In fact there's Saigyou Temple.
  2. This arrangement of the 7 colors with characters would be a little in minority; at least the majority does, on the day of publishing this magazine, associate them with three youkai of Yakumo and their spell cards.