Strange Creators of Outer World/Let's Look Back At I&MP-PoFV-StB

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萃/花/文
振り返りインタビュー

I&MP / PoFV / StB
Looking-Back Interview

「永夜抄」以降の数年間は、東方Projectの中でも、
バラエティ豊かな作品の発表が続く、揺籃期とも言うべき期間となっている。
改めて作者のZUN氏に振り返ってもらった。

「萃夢想」

Immaterial and Missing Power

「萃夢想」は、いろいろなことが初めてでどうなるか全くわからなかったぶん、思い入れがありますね。黄昏フロンティアの人たちがどういう人たちなのかも全くわからなかったし。なんとなく「Eternal Fighter Zero」(※美少女ゲームブランドKeyおよび同スタッフが手掛けたゲームのヒロインたちが総登場する格闘ゲーム)が上手く行ってるように見えたので、ちゃんとした人たちなのかなと思ってたんですけど……(笑)。当時、あまり僕自身はそのゲームを遊んでませんでしたけれど、当時勤めていた会社では遊んでる人たちがいっぱいいたんです。昼休みに集まって対戦してて、社内でも有名でした。

黄昏さんが最初に持ってきた案は、細かいことは覚えてないけど、外の世界から人が入ってくるようなものがいいと。そのストーリーでどうやって対戦につなげていくんだろうかと思ったんだけど……。やっぱり東方の世界観で何かしようと考えた時に最初に考えるのは外から誰かが入って、そのキャラの視点で物語が進むっていうパターンなんでしょうね。まあ結局また自分でストーリーを書くことになるんですけど、最初にあった企画案の一つにお酒を集めるっていうものがあって、僕が引き継いだ後も微妙に残ってるんです。結局「酒」っていう部分だけが残って、宴会を開くこととか、たまに会話に出てくるくらいになった。「萃夢想」は「永夜抄」と同時に出る予定だったから登場キャラも今みたいな感じになってますけど、最初から「永夜抄」の後に出る予定だったら「永夜抄」のキャラも入れたかったですよね。発売時期が変わるということは、そういうことが起こるわけです。でも、今ほど作品ごとのストーリーが繋がっていないから、あまり問題ではなかった。

格闘ゲームじゃないものを作りたいっていう目標もありました。当時、シューティングゲームと同じように格ゲーも「こうでなければならない」っていう思い込みが作り手側にもプレイヤー側にもあって、そこからズレてる作品が出たら叩かれるんです。だったら、最初から格闘ゲームって言わなきゃいいということで「萃夢想」は「弾幕アクションゲーム」と名乗ってる。当時シューティングでも弾幕すら文化として認められていなくて、あんなゲームは許せない、あんなものはシューティングとは認めない、みたいな人たちがすごくいっぱいいた。だから、東方では弾幕というものを逆に推し出して「弾幕シューティングである」って名乗ることにしたんですね。黄昏さんにも同じ考えを共有してもらって、これは格ゲーではない、対戦弾幕アクションであるっていうことにしてもらった。

あと、これは「萃夢想」以降の黄昏さんとの作品でもそうなんだけど、各キャラに1個新しい属性を持たせようとしてる。「天気」とか「オカルト」みたいに、別の属性を付与することでちょっとだけ違うキャラクターにしている。そうしたほうがキャラクターを見るときにワクワクするんじゃないかなって。黄昏さんの作品は公式だけど二次創作でもある、「公式二次創作」という扱いで、二次創作と公式の境目があいまいになっていく今の流れの中にあるわけなんです。ナンバリングの小数点表記に関しては、僕の中でも二次創作感が強い。小数点がある時は自分のゲームも含めて二次創作をしてる気持ちですね。

「花映塚」

Phantasmagoria of Flower View

ちょうど二次創作をする人がすごく増えてきたので「ずるい、僕も二次創作したい」ってタイミングだった(笑)。そうして昔作った「『ティンクルスター』っぽいゲーム」ができた。「ティンクルスター」はすごくいい、とても独特なゲームなんですが、ああいうのをオマージュしたかったんですね。しかもちょうど同じタイミングで「ティンクルスター」の続編が出てさ。出るなんて全く知らなかったんだけど、本当にタイミングもほぼ同じでびっくりしましたよ。

「花映塚」ではあまり他のゲームにピックアップされていないキャラを使おうと思って。基準は「萃夢想」と被らないようにということと、既にストーリーが決まっていたから60年以上生きていないキャラクターか、もしくはちょっとお馬鹿なキャラクターである必要があったんです。あまり強いキャラを入れるとストーリーが破たんするし、できる限り事の次第を知らないキャラを選ぶことに。

「花映塚」は登場キャラが多いのも大変だったけど、そのキャラ用にストーリーをたくさん作らなきゃいけないのが大変でした。マッチモードのセリフも膨大だし。同キャラ対戦とかは意外と面白いというか、ふざけられるしメタ感が出せて遊べるから面白く作れるんです。でも、むやみにキャラクターを増やせばいいもんじゃないなあと学びました。

開発してる途中に「三月精」の連載も始まるし、書籍の「文花帖」も作ってるし、そもそも普通に会社に勤めてる。箸休み的なつもりで「花映塚」に手を付けたら大やけどですよ(笑)。でも単純に忙しさで言えば今のほうが上ですね。

でも、おかげで「花映塚」に出てるキャラは一部を覗いてはまあまあ使いやすく仕上がってくれた。文も「花映塚」のキャラだし小町とかも使いやすい。幽香は、キャラの選択の幅という意味で出てもらいました。過去のキャラを出す時っていうのは、単純にネタ切れなんです。

「花映塚」では、ネットワーク経由でリアルタイムで対戦したり、対戦している当人たち以外にも見せたりしたかったんです。ゲームセンターで上手い人がプレイしていると、自然と周りに人が集まってくる。その人の輪を「ギャラリー」って呼ぶんですが、あれをリアルタイムでネット上で再現することができたらすごく面白いじゃないかって思っていて、その先駆けとして「花映塚」あたりでそれ用にプログラムを作ってたんですよ。なんでゲーセンにシューティングを遊びに行くんだろうって考えると、やっぱり見てくっる人の存在は大きいから、家でもそれを再現できたらいいな、そうすればもっと東方が拡がるかもしれないなって。そうしたら、ニコニコ動画とかが登場して、リアルタイムで動画が配信できるようになってきた。「あ、これで全て解決じゃん」って(笑)。当時はそんなにネット回線が太くなると思っていなかったですからね。

「花映塚」のストーリーも今の東方にすごく繋がるような内容で、世界観が完成してきたことを感じます。外の世界とかメタな要素を作品に取り入れるタイミングで。ちょうど戦後60年だったからああいう内容になったんだけど、あとスマトラ沖で地震があったりして世紀末感というか無情感があって、そのあたりから輪廻を引き合いに仏教観が入っている作品になりましたね。ゲームを楽しもうと思うと「うるさいなぁ」っていう感じのゲームが多いけど(笑)。

「文花帖」

ネットワークに目を向けた結果、「号外」を後から配信するっていう目論見もあったけど、できなかったよね。途中でやる意味を感じなくなってさ(笑)。

「文花帖」でやりたいことは明確で、実は「永夜抄」開発のころからネタがありました。なぜ「紅魔郷」で弾幕に名前を付けたかというと、弾幕をパッケージ化してキャラクター性を持たせたかったわけです。それをさらに突き詰めて、美しさが無いとキャラクター性が無い、じゃあ美しさをどう判定するか、ってときに瞬間を切り取りたかったんです。「永夜抄」の時には画面をキャプチャーして、どうこうするっていうシステムのアイデアはあったんですが、ゲームには全然活かせなくってどうしたらいいんだろう。美しさを点数に変換するにはどうすればいいんだろうって考えていたら、おあつらえ向きに写真を撮るキャラが出てきた。写真を撮って弾を消せればゲームとしても成立しそうだ、みたいな考え方で見切り発車で開発しました。

最初はとにかくつまらなくて大変でした。避けられないような弾を出して、カメラで撮影してみて「あ、消えた消えた……で? これ面白いのか?」って(笑)。でも、こういう方向でやるって決めたから、面白くなるまでがんばっていろいろなアイデアをこねくり回して作ったんです。弾を消すだけじゃなくて本人を撮影する、近くに行かなきゃ撮れないようにする、近くに行かせないような弾を出そう……そうしてアイデアが積み重なって、なんとか作り上げることが出来ました。

とにかく弾幕を切り取って点数をつける、というアイデアだけを膨らませたゲームでした。それを単純にそのシステムだけで説明しちゃうと「弾幕を四角く消すゲーム」ってなっちゃうんだけど、そこに新聞記者のキャラを出すことによってストーリー的にちゃんと意味ができて、面白さも出てくる。各キャラクターの写真をパシャパシャ撮っていく、ということにしたんです。

なかなか僕の中では面白いシステムでした。作ってて楽しかったですね。見たことも無いものを作ってる感じがして、自分の中では習作みたいなものだから、イベント限定での販売のつもりだったんです。主人公だって霊夢でもないし。コミケ直前に発表して「こんなんでもよければ、ぜひ」くらいのノリだったんだけど、すごくたくさんの人が並んじゃって。あれ、むしろこういうのが大好物でしたか? って。

自分なりの実験だったことが大切だったように思います。全てが弾幕から出発していて、それをキャラクターの魅力に結び付ける。そして、結果的にそれがゲームの魅力になる。その文法を確認するために作ったようなものです。